【コラム】中国に子会社を立ち上げるも(前編)~日本やアメリカとは当然違う国~

中国と日本は地図上では隣にあると言ってもいいぐらい近い国。しかし文化は大きく違います。中国滞在経験のあるライターのBILLIKENが、日本と中国の相違点についてお伝えしていきます。今回は中国の海岸沿いにある大都市にてスーパーを開業し運営しているFさんの失敗談をご紹介。

中国で子会社を立ち上げることに

F「私は日本国内に本社がある食品スーパーの企業に勤務しています。5年前に、中国でもスーパーを展開することになり、私たちは中国に子会社を立ち上げることになりました。すでに日本の大手スーパーが中国国内で成功をおさめているため、私たちの会社も成功できるだろうと考えたのです。」

まったくコトが進まない

Fさんは続けます。

F「ところが、まず子会社を立ち上げる段階で躓きました。ほとんどの外国では、日本の企業が外国100%出資の子会社を設立することは合法です。何も問題はありません。ところが、中国では現地の企業との合弁会社という形をとらないと、会社を設立することができないのです。そのため、当初の予定ではすぐに子会社を立ち上げて、2年以内に1号店をオープンさせる計画だったのですが、パートナー企業を探すだけで1年間も時間を費やしてしまいました。」

BILLIKEN(以下BI)「1年経ってもまだスタートしていないということですね?」

F「はい。そして、やっと上海にある現地企業が、私たちと合弁子会社を設立して、スーパーを経営することに合意してくれました。この次のステップは、スーパーの立地選定です。これについては、上海市内に売り上げを見込める土地を見つけることができました。」

さらなる困惑へ

F「ところが、この次の段階である許認可と資金調達で、大変な苦労をさせられることになったのです。中国では、スーパーを開業するために、上海市当局から許認可を得る必要があります。この手続きが、いっこうに前進しないのです。6ヶ月経過しても、1年経過しても審査が進む気配がありませんでした。私たちは何度も当局に出向き、審査の手続き状況について確認をとったのですが「現在、審査をおこなっている」という回答しか得られません。」

BI「二度目の躓き、いうことですね。」

F「私は、上海で中国のビジネス事情に詳しい人物に、私たちの許認可申請手続きが進まないことを説明し、なぜ審査が進まないのかを尋ねました。すると、まったく意外なことを小声で教えてもらいました。」

BI「それは何ですか?」

日本やアメリカとは当然違う

F「勘違いしてはいけませんよ。この国は自由主義の国ではありません。一党独裁の国です。やっていることは資本主義ですが、日本やアメリカとは違いますよ。ですから、許認可を得るためにはコツが必要なんです」というのです。そして私がコツを尋ねると「誰に話を通すと、許認可手続きが早く進むのかを調べる必要があります。誰が実質的な権限を持っているのかを把握しないと、この国では商売ができないんですよ」と教えてもらいました。

私たちは、それから数ヶ月かかって、許認可を進めるためのキーマンを探り当てることができました。そして、やっと許認可を得ることができました。その後、今度はスーパーの建物を建てるための資金調達をするために、現地の銀行に融資を申し込んだのですが、ここでも融資を実行してもらうために時間がかかりました。キーマンの力を借りないと、融資を実行してもらうことができないのです。」

それでも政治の力を借りなければならない

BI「次から次へと続きますね」

F「結果的には、昨年になって、やっとスーパー1号店を開業することができたのですが、中国と日本の違いに驚かされる日々の連続でした。ひとことで言えば、中国では、政治がビジネスをコントロールしていることを実感させられました。具体的には、誰でもスーパーを開業できるわけではありません。1年間で開業できる枠というものが、行政のなかで暗黙のうちに設定されており、その枠を獲得するために政治家の力を借りなければならないのです。そこが、中国と日本の相違点なのだと痛感させられました。中国でビジネスを展開するのは、容易なことではありません。」

Fさんには、後日続きをお話しいただきます。

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執筆:BILLIKEN

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