中国滞在経験のあるライターのBILLIKENが、実際に北京で経験した驚きを紹介します。
個人認証による抑止力
10年ぶりに北京出張に行き、その生活環境の進化に驚きました。そしてこれから日本がどのように中国においてビジネスを展開していくことができるのか明確な回答を見つけられず、不安しか思い浮かびませんでした。具体的に説明していきましょう。
まずは、お買い物。中国では誰も財布を持ち歩きません。顔認証や指紋認証で買い物が成り立ってしまいます。話題となったシェアサイクルも、乗り捨てなどマナーの問題でうまくビジネスがまわっていないという声もありましたが、事実は異なっていました。シェアサイクル、レンタサイクルを利用するにも個人認証が必要となり、乗り捨てなどが罪に問われるという抑止力が働くからです。短期出張ではその利便性を体感できませんでしたが、現地の方々は本当にスマホだけで全てを済ませてしまいます。
一人っ子政策の余波
人口の多い中国では長らく「一人っ子政策」が打ち出されていたため、兄弟のいない一人っ子が今も多いです。そのため、両親に溺愛され育った子供が多く、相対的に利己的な人が増えたといわれています。日本人からしたら自己中心的な人が多いなと思うこともありますが、それは中国の政策のため仕方がないことなのかもしれません。
AIとロボティクスの融合による徹底管理
食事もワンストップで注文できます、さらに市場に行けば、魚や肉、野菜といった生活用品に至るまでICチップが添付され、瞬時にその流通経路などが確認できるようになっているのです。実際にここまで管理が徹底されていれば、買い物をする側にも安心感が生まれます。数年前までは中国で生産されるものは品質に関する疑問が常に問われていましたが、現在は多くの領域において一定のクオリティーを達成しています。
製造分野においてもAIとロボティクスの融合が進み、単純作業を行う労働者の数は極めて少なくなっています。私が見学に行った工場などは、まさの労働不足問題を抱える日本にとってお手本とすべきものではないかと考えてしまった次第です。さらには企業の働き方についても近代化が進み、大企業の平均年齢は二十代、かつ出勤についても個人の裁量に任せ、あくまでも契約上の成果のみがその給与基準となっている会社も各地で見受けられました。
ビジネスマナーも向上
更には、このようなビジネスモデルにおける変化だけではなく、モラルについても十年前と比較すると大分意識の変化がみられています。中国といえばゴミが落ちても気にしない、ビジネスマナーは礼を欠くと言われがちでしたが、もはやそんなことはありません。エレベーターでゴミが落ちていれば自然と拾いますし、社外の方が訪問した際には丁寧に挨拶をしてくれます。さらには日本の企業といえば、松下幸之助や稲盛和夫といった偉大な経営者の考え方を議論しようと語りかけてくるほどの熱意も持っています。
国策で進める改革の強さと日本の課題
現在では、ビジネスモデル、技術だけではなく、モラルの面でも日本が優っていると断言できるほど差はなくなっているなという印象でした。場合によってはむしろ中国を手本としながら、上手にビジネスの連携をとる手法が日本企業に求められてくるかもしれません。また、国策で動く中国に対して、日本政府としては日本の企業が中国進出できる環境作りを、これまで以上にしっかり整えてもらうことが重要になると考えます。
執筆:BILLIKEN
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